2011/04/28

飢(かつ)える月

飢(かつ) え る 月                      
―――
WRITTEN BY KOJIKA






・・・待って・・マリナ、ゴメン・・つらいかい?

                    ・・・少し、そう・・・・・・力を抜いて・・じっとして・・・・・


       


   ・・・もう少し、あと少しだけ、我慢して

              ・・・君を傷つけたくはない。・・だけど、今はちょっと


・・・理性がもたないんだ・・正気じゃいられなくなる


・・・今動かれたら、逃げられたら、君を危険な目に


・・・合わせてしまいそうだ、必ず・・・ゴメン
                            




                    ・・・でも・・逃げないで。・・・オレを怖がらないで


・・・オレはまだ君を愛したいんだ。

・・・まだまだ足りない。もっと・・・もっと









                         ・・・そう・・オレはずっと・・ずっと君を愛したい







ふわりと、どこか儚く消えてしまいそうなマリナを掴まえ、それが消えないように、自分から決して逃げていかないように、あらんかぎりの力で抱きすくめる。
一糸纏わぬその姿にオレは恍惚として、その待ち焦がれた滑らかな素肌に指を滑らせ、はやる心をどうにか抑えつつ、そのふっくらとした唇をまるで渇ききった野獣のように貪った。
もっと彼女を味わいたくて首筋に唇を滑らせると、そこには温かな熱を帯びた頚動脈が力づよく波打っている。

ああ、君の輝かんばかりの命がみえるよ。

この皮膚のすぐ下を流れるこの脈動を絶てばすぐにでも

君の命を奪うその場所に、吸い付くようにして歯を立てながらオレはふと思う。
君は無防備にこんな危険な男にその命まで許し、そうして全てをオレに委ねてくれるのか、と。

そう、オレは強欲で人一倍独占欲が強い嫉妬深い厄介な男だよ。
知っているかい?
いつも、何処でも、どこまででも君の全てが欲しくて欲しくてたまらない。
いつもそういう渇いたような飢えたような気持ちで、君を見つめていることを。
そしてそれをどうにか取り繕い、涼しい顔して想いの中で君をいいように貪っている、とてつもなく浅ましい男だということを。
君の想い、魂、存在その全て。君の命までもを欲しがる
どうしようもない救いようのない強欲男さ。
君がいればそれでいい。他には何もいらない。
だから・・許してくれるかい?
それでもオレを愛してくれるかい?

オレのマリナ。もう何が愛していることなのか分からなくなるほどに・・君を愛してる。

君だけを・・永遠に愛しているよ。

全ての想いを込めて彼女を再び自分のものにしようとしたとき、ふと今まで包んでいたその温もりが消えた。
変わりに、その夜空の瞳が大きく見開らかれた彼女の存在ごと、真紅の朱に染まっていく姿が見えた。
まるで、食らい付いたその首筋から勢いよくその動脈血が噴出すかの如くの様に・・・












そこまでして私はハッとして、目が覚めた。
辺りを見渡せば、一人で寝るには広すぎるベットの隣にマリナの温もりなどなく、いつものように寒々とした静寂が広がっている。
全身ビッショリと汗にまみれて荒い息のまま、そのポッカリと穴の開いた空間を握り締め、よろよろと片手を挙げて額に張り付いた髪を払った。
その夢の中の幻覚をさえぎるように・・そして思わず目を覆う。

・・・また・・夢か・・・と。
一人寝の夜に夜毎夢見るマリナとの逢瀬。
その繰り返される幻覚にすら、いきり立ってしまう自分を何とか抑えながら、そのままいなくなってしまった妻の、温もりもなく冷え切ってしまったそこにうつぶせに倒れ込む。
急激に汗で濡れたその体温を奪うその冷たさと、相反して堪えようのない夢で見た彼女への愛おしさにうまれてくる熱に、たまらず冷えたシーツを爪が白くなるほど強く掴んでたえる。

・・・寂しいのは君がいないこと・・・

・・・君を求めて彷徨う全ての思いを抱えて・・・

何に変えても守ってやりたかった。
髪一筋傷つけることなく。
誰にも見せず、一生自分の腕の中に囲っていたいと思った。
しかし、自分のその唯一の愛を守ることが出来なかった・・・!
そして未だにあの男に捕らえられたまま・・・
そのことがいつまでも深く心を苛ませた。
失われた私の妻へと向かう情熱を苦い吐息と共に吐き出す。

・・・妻・・か。それも、あの、マリナが。
・・・信じられないな。何度自分のものにしても、彼女がここに現実にいたという事実が未だに信じられない。
静かに冷たい光を放って左手に収まっているプラチナのリングが、夢ではないと訴えているようで。
それを繋ぎ止めるように、左手にキスを落とした。
アルディに代々伝わるシンプルにしてかつ独特なカーブを描いた美しい指輪。
ああ、私はこれを何が何でも彼女の指に嵌めたかったっけ。
彼女がもし私を愛してくれたなら、と。
本当なら、まさか自分が愛のある結婚などするべくもないはずだったから。なおさら、信じられない。
こんなにこの指輪の意味にすがるとは思いもしなかった。

そもそも、マリナに出会わなければ、自分には愛がなんなのかさえ分からなかっただろうけれども。
それでも出会ってしまった。
最初にして最後の絶望的な愛に。
相手の命までをも欲する程の、狂おしいまでの激しい愛に。
昔から自分の氷のような冷めた容貌とあいまって、感情の起伏がまるで欠落していると人に思われていた。
また自分でも誰も理解されない憂鬱の中で、これといって努力することもなく何を愛するでもなく生きてきた。
自らの中に脈々と流れる倦怠と狂気の中をゆらゆらと漂いながら。

後にも先にも、君だけだよ。
オレの感情をここまで解き放ち、そしてかき乱せるのは。
今ある自分が、理性の制御が全く効かず、夢の中でさえ会えた君にどうしようもなく乱れる自分の心が、君へと向かってしまうオレの体が、不思議でならないよ。
これじゃあまるで、思春期のティーンエイジャーのようだな。

マリナがカズヤのもので、どんなに欲しくても入り込む余地さえなかったあの頃。
そして・・・彼の永遠の喪失の前で、胸を引き裂かれるような哀しみと憤りと絶望の中で、がむしゃらに君をその淵から救い出そうともがいた苦しみの日々。
もうオレは・・・君が少しでも笑顔を取り戻してそうして笑ってくれるのならそれだけでいいと思った。
決して見返りを求めるでもなく、何も求めずただその笑顔を見守れるためならなんだってしようと。
また感情を殺した元の自分に戻り、全てのものから君を守れるように。
二度とこんな酷いことに巻き込まないように。
情などなく弱さも何も持たない、機械のような自分になろうと。
そして君を求めず決してこちら側に巻き込まず、適当に選ばれた良家の令嬢と結婚でもして、自分を君から遠ざけられるようにと。

しかし、精神が壊れかけた君と、治療の目的とはいえ今までになく長い時間を二人で過ごすことは、非常に、理性的な自分を保つことが困難であった。
彼女を前にとても冷静になど、正気を保ってなどいられなくなる。
催眠に成功し、何とか笑顔を取り戻し始めた君のまっすぐな瞳を向けられるとオレは、後ろめたさでいっぱいだった。
カズヤを失って壊れた彼女を、いや、カズヤが存在した時であってさえも、それでも、オレはマリナに恋焦がれ何度夢の中で君を犯していたか知れなかったのだから。
そんな醜い自分の正体を、穢れない黒の瞳に見抜かれているのではないかと、気が気ではなかった。
そして、このままではいつか必ずその夢想を現実にしてしまうだろう確信があった。
飲み込まれそうな欲望を、彼女から逸らし昇華させるために、裏で以前の様なむなしい生活を続けた。
彼女の寝顔を見続ると、急激なのどの乾きに耐え切れなくなって、凶暴すらあるその飢えに自分が怖くなり一刻も早く遠ざかろう思った。
いつまでも見つめ続けたいと思いながらも。
自分の執着心など、君には気付かれるはずがないと思っていたから、どこか安心していた。
第三者として私を見ていたルパートには、自分のおかしな行動の裏を明らかに読みきられていたが。
当主になる人間が女などに執着などするな、さっさとマリナを施設にでも何でも任せて追い出せと、口をすっぱくして言われ続けた。
全くもっともなことだったが、頭では分かっていても今マリナを手放すことだけはできないでいた。








その日の明け方も、いつものようにぐったりとして家に帰ってきたオレは、すぐに自室のベッドに崩れるように倒れこんだ。
するとそこに、わずかながらノックの音が聞こえたような気がした。
まさかこんな時間に部屋に用のある奴はいないと。
空耳かと思って無視していると、今度はか細く自分の名前を呼ぶ声が聴こえる。

「・・・シャルル・・寝てるの・・?」
間違いないマリナだ。
オレはガバッと起き上がった。
一体こんな時間にどうしたというのか。・・怖い夢でも見たというのだろうか・・?

「マリナ!? どうしたの?」
何事だろうと慌ててドアを開けてると、いつもらしからぬしょぼくれた表情で少し不安そうに私を見上げている彼女がいた。
「ご、ゴメン、こんな時間に。あ、あのさ、あたし・・
もう日本に帰ろうと思って。
シャルルのおかげで身体の具合もよくなったし。いつまでもお世話になって居候してたら、シャルルも迷惑でしょう。だからね・・」

「どうして!? そんなこと全然ないよ。何もそんなに急いで出ていこうなんて・・・。どうしてそういう風に思うの?! 君はずっとここにいていんだよ。まだ身体だって完璧に治った訳では・・・」
「でも!! あんたそのうち結婚するって皆ゆってたもん。正式な当主になるって、好きな人と結婚して家庭を作るって。そんな中にあたしなんかいつまでもいられるわけないでしょう!?」
「なんだよ、そのあたしなんかって。マリナがそんなこと考える心配はないよ。
・・・結婚の話はオレ自身の問題だし、何より君はカズヤの・・・大事な客なんだから。
オレは君に対して責任がある。君たちを巻き込んでしまったという責任が。
だからそんな話気にするな」

オレは内心焦っていた。
突然のマリナの訪問と、いきなり出て行ってしまうという彼女の言葉に。
そして彼女の強情さを十分わかっていたオレは、何とか言いくるめられないかとめまぐるしく思案していた。

「気になるわよっ!! あんたこのごろ夜な夜などっかに出かけていくし、夜全然寝てないはずなのに、昼間は昼間で何かと様子を見に来てくれてるのに。
マンガ家がいい加減夜行性だと思っていたけど、あんたはそれ以上よ!?
おかしいわよこのごろ。あたしがいるせいで、あんたに疲れさせてるんじゃヤダもん。
散々世話になってあんたのために、何でもしてあげたいと思ってたけど、やっぱりあたしが日本に帰ることが一番かなって思うもの。」

オレが夜抜けていたことをマリナが知っていたことに少し驚きながらも、皮肉な顔で見上げてくる彼女をみた。
「ああ、そんなこと気にしてたの?
マリナちゃんにご心配して頂かなくても結構だ。自分のことはオレが一番良く分かってるよ。
オレは医者だよ? 自己管理ぐらいできる。
さぁ、この話はおしまい。まだ朝食には早いだろ? 部屋に戻ってお休み。送るから」

そういって彼女の肩に触れようとしたら、思いきりその手を跳ね除けられた。
「やっ・・・!!」
いきなり跳ね除けられて宙に浮いて止まった手を静かに戻しながら、突然のマリナの拒絶にとまどった。
「・・・マリナ・・・?」
うつむく彼女の視線に合わせるように傍に屈もうとすると、彼女はドキッとして飛びのく。
「・・ご、ゴメンなさい・・ちょ、ちょっとシャルルがいつもと違うか、香がしたから、ビックリしちゃっただけ。そうなの。・・た、叩いたりしちゃってごめん。
も、もう寝るね。シャルルも早く休んで・・・」

マリナにオレが何をしていたか知られたことに、愕然とショックを受けたが、目の前でそういって慌てて駆け出していくマリナを、反射的に掴んで連れ戻した。
駆けてくマリナの目に、涙が浮かんでいるのを見たとき、もうそのときにはどこか理性の枷が外れていたのかもしれない。

「いやっ。見ないで。離してよっ!! 他の女の人を抱いたその手であたしに触れないで!! 汚い! あんた、結婚するんでしょう!? シャルルが選んだ人と! こんなのひどいよ。相手の人がかわいそうよっ、こんなのあんたらしくないわよ。」
「オレらしくないって!? オレらしいってなんだよ。
俺は君が思うような聖人君子じゃない。マリナは認めてないかもしれないけど、オレだってただの生身の男だよ。生身の男は生身の女とベットにいくんだ。
もう、気持ちだけでどうこうなった10代じゃない。
それに、なんで君に泣かれなきゃならない。オレが何処で何しようとマリナには関係ない。」

マリナが目を見開いて見つめてくる。
よせ、止めろっ、それ以上彼女に言うな。傷つけるな

「・・・ほ、本気で言ってるの? シャルル・・・あんた、自分の選んだ人を悲しませても、なんとも思わないと?」
「悲しむ? ああ、そういうことになるかもね。
まあ、どこかで適当に選んだ名前も知らない誰かさんは、それでも多少は悲しいとか思うのかね。
マリナは勘違いしているのかもしれないけれど、オレが自分で選んだなんてそんなの建前だ。
最も求婚はそれでもオレがしなきゃならないんだろうけど。
愛なんか無くても結婚なんか十分できる。あいにくとね。
・・・そして逆に、どんなに愛していても結婚できない場合もあるんだ。」
一瞬だが、自分を見て切なそうに歪んだ青灰の瞳を見る。
「・・・え?」
「オレはそういう世界にいるんだ。君に泣いてもらう価値なんてこれっぽっちもない。
それとも何、同情でもしているの? ハハ。そんな心配なんかない。
大丈夫オレはうまくやれるよ、きっと。」

「あんた、それでいいわけない!! だって、皆もっと幸せに、豊かになるために生まれてきたんだもの。あたし・・あんたには絶対幸せになって欲しい。なんてたってカズヤの、それにあたしにとっても、とても大事な人だもの。
その為なら、なんだってする。もう数え切れないくらいあんたはあたしを助けて、そうして支えてきてくれた。
あたしは、・・・あたしはあんたに何ができるの? どうすればいい・・」

「―――止めてくれ、同情なんてされたくでもない。
それにそんなこといったら、今のオレは冗談でも本気にしそうだよ。
ハッ、なんだ、これじゃぁ、歴史の繰り返しだな。勘弁してくれ。そしてまた、パラドクスかい。笑えないな。」

「何いってんのよ、同情なんかじゃないわよ!?
あ、あたしは本気でそう思ってるわよっ。・・きゃぁ」

突然ものすごい力で引き寄せられたかと思うと、燃え上がりそうなほど熱を持ったブルーの瞳で、かみつかんばかりに見つめられた。
・・え?なに・・?あたし、は決しておいしくないわよ。?あたしは食べるの専門。。・・・

「っ、なんでもすると言ったな。
じゃあ、マリナ、君をオレにくれ。
身も心もその存在ごと、その全てをオレにくれ!
いつも心の中にはオレしか住まわせず、他の誰も見ず、オレがどんな要求をしても恥ずかしがったり、オレを嫌いになったりせず、永遠にオレだけのものでいてほしい。

・・どうだい、それでも本気でそんなこと言ってるなんて言う気か?」
「なっ、そ、それって何?! あ、あんた、あんた、あたしに愛人にでもなれって言うの? あんたの大勢の恋人の中の一人ってこと!?」
「いや、違う。正式な結婚だ。生涯の伴侶としての、だ。そもそも、オレに恋人なんかいない。
今までも、そしてこれからも生涯愛するのは君ただ一人だけだ。
そんな覚悟が君にはあるかと聞いてるんだ。」

・・シャ、シャルルが、あた、あた、あたしを!?あ、あたしとけ、けけ、っけ、結婚!?確かに、大昔に告白されたような気がするけど。もうそんなこと忘れていると思ってたのに。
そう、だいぶ、前の話しだし。
ま、ま、まさか~

「まさかじゃない。本気だよ。ただしここで良く考えてくれ。
ここで君が間違いでもしウィなんていって結婚したとして、その後で、やっぱり間違えましたなんていういい訳は聞かないから。
何があっても君を離さないし逃がさない。
ほかに好きな奴ができたとか、もう、オレから逃げ出したい何て言っても、絶対に離婚なんかに応じないし、別れて逃がしたりなんかしないから。」

ついに、自分の気持ちを吐き出してしまった。
もう自分でも何がなんだか分からない。こんなこと初めてだ。
一生自分の奥深くに沈めておこうと思った想いだったのに。

マリナがここから出て行くといって、そしてオレを責めて泣いた顔を見てるうちに、止めるまもなく澱となっていた想いが、言葉になって口をついてでてきてしまった。
良く考えればあんな時間にこんな廊下で、こんな口げんかのようなプロポーズを自分がしているなんて酷く滑稽だったと、今にしてみれば思う。
あの後オレに、食い入るように見つめられたマリナが真っ赤になって、池の鯉のように口をパクパクしていた姿が、今でも目に浮かぶ。




・・・なんて・・なんて幸せだったのだろう

ただとなりに、君がいてくれるということそれ自体が。

はにかんでそれでも、オレが好きだといってくれた君を、一生忘れない。

もう、このまま死んでしまいたいと思った。



「おい、シャルル。とうとう気でも狂ったのか? あの日本人のただのチビ女と、本気で結婚したいと?
しかも、愛しているから結婚したいだと? あまり笑わせるな。
大体、頭のいいおまえはそんな結婚が誰のためにもならないと、十分分かりきっているんじゃないのか?
どうしても欲しいというなら、愛人にでもして囲えばいい。何をわざわざ矢面に立たせるようなことにするのかわからないな。
お前の父も祖父もやっていたことだろう? 今更何を寝ぼけたことを言っている。
よく考えろ、いつもの冷静さは何処へいったんだ。え?」

「十分すぎるほど考えたさ。確かに君が言うとおりだ、ルパート。
否応無く彼女を危険の中に巻き込むことになる。オレといるだけでね。だが、オレは自分の全てで、マリナを守る覚悟がある。
絶対に、オレの命に変えてもね。
それに、少なからずもう彼女はアルディと関わりがあるとして、知られているだろう。
あの忌々しい銃撃戦に巻き込まれて、その後ずっとオレがここに滞在させて治療してきたのだから。日本に帰ったとしても、無事かどうか・・・。
常に気を揉まなくてはならないし、オレがそうした配慮をしているだけで、また狙われるようになるだろう。
それなら、いっそオレの目の届く範囲にいてくれたほうが、はるかに安全だ。」

「あきれるほど都合のいい解釈だな。本当に色恋に狂ったか。
その判断の鈍りで、いつか取り返しの付かないことになるぞ。
そうなってもお前の狂気に付き合う気は無い。当主の務めは必ず要求するぞ。」

「お言葉だな、人を狂人だと? まあ、マリナに関して俺はそう見えるのか?
それにオレはもう二度と母の様な狂気に、アルディにはいる女をさらしたくない。作り出したくは無い。
断じて自分は父や、祖父のような生き方はしない。
生涯ただ、マリナ一人だ。」

「フンよく言うな。今まで散々フラフラしていたお前が、どの口でそんな冗談を言う。」
「なんと言われようとも、マリナが手に入るのならもうそれ以上は無い。生涯ただ一人だけだ。」
「それは気の毒だな。お前をたった一人で受け止めなければならないその女は。
そのうち逃げられるのが落ちだ。哀れだね。」

「そんなことはさせないよ。一生逃がさないから。
そうだよ、俺が欲しいのは彼女の心だけでも身体だけでもない。
それを通り越して本当に全部を欲しい。
愛人などでは事足りないんだよ。そんな単なる約束は、いつか逃げられることが出来るのだから。
法律でも何でも、全てで名実共にオレのものにする。

決して離さない。」
「やれやれ、私の甥はいつの間にかとんでもない危険な男にそだってしまったようだな。」




そうだ、オレもマリナに出会うまでは気が付かなかった。
自分のこんな部分があることを。
そう、オレの全ての感情というものを引き出せるとしたら、それはこの世でただ一人、マリナだけだろう。





あきれるほどに、おかしくなるほどに君を、



君だけを愛している。    





―――FIN       03/08/02











03年3/7にカキコいただいた、ポルトオシエルサイドストーリー第3弾!
もうもう・・・彼女がいなかったらこの連載も、どれだけ薄っぺらかったことでしょう(笑)
真夜中のギャルソン コジカ嬢の、身悶えせんばかりの素晴らしいシャルマリですっ(><)

オシエル時間で言うと4話以降のお話になります。
愛しい妻マリナちゃんをミシェルにさらわれて苦しんでいるシャルルが、面影をたどりながら回想する、
前作のガイエピよりはるか以前の出来事。
言うなれば、オシエルのはじめの一歩的エピと申せましょう。
シャルルの苦しみがとてもよく表れていて、そしてなおかつ懐かしい雰囲気(!)が漂う、
コジカ節がこめかみにきます!(*><*)
夜遊びから帰ったシャルルの手を振り払うマリナちゃんに、正直、Pは心臓どきどきでした(笑)
その後のシャルルの押しの強さに・・・もう撃沈です。

オシエル事件の前に、こんなことが二人の間にあったとは・・・!
皆様の感情移入度も、更にアップされたことでしょう、ふふ。
皆様も、シャルルの苦悩と幸福に、想いを馳せてみてください。

この創作の題名ですが、カキコ当時にはコジカちゃんつけておられなかったので、
怖いほどのシャルルの情熱から連想しまして、これをつけさせていただきましたm(_)m

彼の愛はマリナちゃんただ一人だけのもの。
他はいらない。
それだけを、生涯求め続ける―――

なんとも不器用な、しかし純粋すぎる想い。
彼の渇きが癒えることを祈って・・・
ああマリナちゃん、早くシャルルの元に戻ってあげてっ(><)

コジカちゃん、いつも私たちを闇の狭間の夢の世界に誘ってくれて、本当にありがとう。
貴女は闇の天使さまだわ♪
尽きぬ感謝の気持ちを、貴女に!



―――と、当時のぷるは書いております^^
8年の時(ナヌ!)が流れても、コジカ節は色褪せず私たちを魅了してヤミマセン。
ヤサグレ具合、危険度! オシエル前のシャルル荒れてますね~~w
叶わぬ夢の中で触れる柔らかなマリナちゃんの肌…それはきっと質の悪い麻薬のように、彼を永遠に苛んだのでしょう…よく壊れなかったものです、ウフフ。

どこかが危うい、アルディの天才双子。
忘れたいのにその冴えるばかりの頭脳が、自らの安寧を許しません。
唯一を求め続けるということは―――普通では、耐え切れないことなのです。
マリナちゃん、彼らをどうか救ってあげてください……

8年経ってもコジカ嬢っ、あなたに感謝を捧げたい!!!
ほんとにほんとにありがとおおおおおおおおお!!
オシエルなんとか終わらせてみせるからね~~~~~(大笑)











読んでくれてありがとう




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