2014/09/03
2011/04/11
epi:20 屈服のくちづけ
パートマリナ&ミシェル P
わからない、全てが。
もう何がどうなっているのか、自分でもひどく混乱している。
自分の立場がわからない、自分の気持ちがわからない、ミシェルが何を考えているのかわからない―――。
epi:19 熱い背
パートミシェル P
なんだ、何が起こったんだ、一体。
鼓動がうるさいくらい、耳元で鳴っている。
息をするのも苦しいくらいに、胸がしめつけられている。
息をするのも苦しいくらいに、胸がしめつけられている。
あいつにつかまれた背中が―――、どうしようもないくらいに、熱をもっている。
2011/04/10
epi:18 触れれば、もう
パートマリナ&ミシェル P
絵を描いている時は、何もかも忘れて熱中することが出来た。
というか、描かねばならないという焦燥感すら感じるのはなぜだろうと、マリナは常々思うほど、絵にのめりこむ自分を不思議に思っていた。
おそらく失った記憶さえはっきりすれば、その理由もわかるのだろうが、いつまでもない過去を悩むより、とにかく描くことの出来る今に感謝しようと決めていたので、鉛筆を握る手にも自然と熱がはいった。
というか、描かねばならないという焦燥感すら感じるのはなぜだろうと、マリナは常々思うほど、絵にのめりこむ自分を不思議に思っていた。
おそらく失った記憶さえはっきりすれば、その理由もわかるのだろうが、いつまでもない過去を悩むより、とにかく描くことの出来る今に感謝しようと決めていたので、鉛筆を握る手にも自然と熱がはいった。
epi:17 揺れる
パートミシェル P
「―――さて兄さん、あんたは何をやってるんだ?
僕のいやがらせにはよく耐えているみたいだけど……あの豆狸のことは、もうどうでもいいのかい?」
僕のいやがらせにはよく耐えているみたいだけど……あの豆狸のことは、もうどうでもいいのかい?」
ディスプレイから漏れる人工の光に照らしだされたその顔は、物憂げでエレガントな美しさを誇っていたが、細めた青灰の瞳の光は、したたかな悪意をにじませていた。
こうしている間にも、ミシェルは様々な方法で、シャルルに圧力をかけていた。
時には揺さぶりをかけるように、二人にしか解けないやり方で、マリナの映像や音声などを送ったりもした。
2011/04/09
epi:16 この声を
パートミシェル&マリナ P
ミシェルは隠れ家にしている洋館の三階窓から、中庭でちょこちょこと動き回るマリナを見下ろしていた。
気まぐれで食事をつくって以来数日間、ミシェルはマリナを避けていた。
自分でもなぜそうしているか理解できずにいたが、あの顔をみるだけで波立つ己の心に、心底嫌気がさしていた。
気まぐれで食事をつくって以来数日間、ミシェルはマリナを避けていた。
自分でもなぜそうしているか理解できずにいたが、あの顔をみるだけで波立つ己の心に、心底嫌気がさしていた。
なぜだ、あれほど欲しかったもののはずなのに、向けられる表情ひとつにすら、神経が逆撫でされたように苛立つのは。
なぜなんだ。
なぜなんだ。
epi:15 微光
パートマリナ&ミシェル P
心地よい揺れに身をまかせながら、マリナは幸福な浅い眠りを楽しんでいた。
胸が張り裂けるかと思うほどのあの想いは、なんだったのだろう・・・あの青みをおびた白、甘美な甘い香り、どこまでも高貴なその姿。
思い描くのは、街の花屋でわけてもらった、あの白バラ。
なぜだろう、こんなに嬉しいのは。
なぜだろう、こんなに心があたたかくなるのは・・・。
胸が張り裂けるかと思うほどのあの想いは、なんだったのだろう・・・あの青みをおびた白、甘美な甘い香り、どこまでも高貴なその姿。
思い描くのは、街の花屋でわけてもらった、あの白バラ。
なぜだろう、こんなに嬉しいのは。
なぜだろう、こんなに心があたたかくなるのは・・・。
ぼんやりしたその姿を抱きしめたくて、もどかしさのあまりに伸ばした指先に、ふいに冷ややかな感触が襲った。
驚いて目を開けると、自分を抱き上げたミシェルの、氷のように美しい無表情な横顔が、目の前にあった。
驚いて目を開けると、自分を抱き上げたミシェルの、氷のように美しい無表情な横顔が、目の前にあった。
epi:14 ずっと欲しい
パートミシェル コジカ
心底ムカツク野郎だよ、あんたは。
アレの記憶、心、身体、その意識の全てをあんたから取り上げて、全て貪り尽くし、そうしてアレのことごとくを奪ってやったのに。
果てはこれ以上ない絆を、アレの中に埋め込んでやったのに。
まだあんたはアレは自分のものだと言い張るんだ。
え? 兄さん、往生際が悪すぎだよ。
いい加減にしなよ。
アレの記憶、心、身体、その意識の全てをあんたから取り上げて、全て貪り尽くし、そうしてアレのことごとくを奪ってやったのに。
果てはこれ以上ない絆を、アレの中に埋め込んでやったのに。
まだあんたはアレは自分のものだと言い張るんだ。
え? 兄さん、往生際が悪すぎだよ。
いい加減にしなよ。
2011/04/08
epi:12 テンペスト
パートシャルル&ミシェル P
「この患者が運び込まれた病室はどこだ!?」
絶えず人がいきかい、様々な指示の声のとぶ救急病院の廊下で、すれ違い様につかまえたドクターに、シャルルは詰め寄った。
白金の髪をふりみだし、突きつけた写真に映るのは、明るい笑顔の愛しい妻・・・マリナ。
「あ、あなたは?」
「彼女の夫だ! 容態はどうなんだ!? 命に別状は!?」
そうして告げられた事実に―――シャルルは戦慄した。
2011/04/07
epi:10 光を探して
パートシャルル コジカ
この二ヵ月余りどう暮らしてきたのか分からない・・・。
魂の半分をもぎ取られたまま、狂ったように、失われたその半分を追跡する毎日だった。
それ以外もう周りがどうなろうと、知ったことではなかった。
飲まず食わず眠らず、ひたすらに情報を集める毎日。
ただ少しでもと、その痕跡を求めて奔走するのに、一向にその気配がない。
それは故意に妨害、或いはことごとくもみ消されてしまっているのだろう。
それ以外もう周りがどうなろうと、知ったことではなかった。
飲まず食わず眠らず、ひたすらに情報を集める毎日。
ただ少しでもと、その痕跡を求めて奔走するのに、一向にその気配がない。
それは故意に妨害、或いはことごとくもみ消されてしまっているのだろう。
epi:9 ツクラレタ愛
パートマリナ コジカ
昨夜からあの人は珍しく出かけている。
昨夜は凄い嵐の夜だったのに・・・。
用事という用事は、ほとんど全てこの家の中で、おそらくは―――あたしは今でも不思議に思っているのだけれど―――画面上で済ませてしまっている人だから、なんだか家を空けているということが、ひどく妙に感じる。
自分から出かけることはホントに珍しい。
まるで世間にその美貌を晒すのを避けているかのようだ。
あんなに綺麗なのに何故なんだろうと、あたしはいつも思う。
何か理由があるような気がするが、それは聞いてはいけないことのように感じる―――。
昨夜は凄い嵐の夜だったのに・・・。
用事という用事は、ほとんど全てこの家の中で、おそらくは―――あたしは今でも不思議に思っているのだけれど―――画面上で済ませてしまっている人だから、なんだか家を空けているということが、ひどく妙に感じる。
自分から出かけることはホントに珍しい。
まるで世間にその美貌を晒すのを避けているかのようだ。
あんなに綺麗なのに何故なんだろうと、あたしはいつも思う。
何か理由があるような気がするが、それは聞いてはいけないことのように感じる―――。
epi:8 あやまんなさいよ
パートマリナ&ミシェル P
あれはいつのことだったか・・・マリナはミシェルと暮し始めた当初のことを思い返していた。
「・・・なに見てるのよ・・・」
「フン、次はどんなまずいものが出来るのかと思ってね。僕が餓死したらお前のせいだぞ」
「そう思うんだったら手伝うなり、出来たものでも買ってくるなりすりゃあいいでしょうが!」
「いやだね、マリナが作ったものじゃなきゃ食べない」
白金の髪をひるがえし、冷たい表情でぷいと横を向いた自称夫に、マリナは心底腹がたった。
「フン、次はどんなまずいものが出来るのかと思ってね。僕が餓死したらお前のせいだぞ」
「そう思うんだったら手伝うなり、出来たものでも買ってくるなりすりゃあいいでしょうが!」
「いやだね、マリナが作ったものじゃなきゃ食べない」
白金の髪をひるがえし、冷たい表情でぷいと横を向いた自称夫に、マリナは心底腹がたった。
epi:7 確信と不安
パートマリナ コジカ
それはとても美しいヴィラだった。
古い白い壁に木の漆喰が打ち込まれ、辺りの緑と素晴らしく調和がとれていた。
その穏やかな外観からは想像できないが、一歩中に入ると、深いブラウンの重厚な扉で統一された近代的な、―――そう、まるで要塞のような造りになっていた。
そして不思議とどこか隠れ家のような雰囲気が漂う。
美しい、とても美しい・・・それは、闇のラビリンスだった。
古い白い壁に木の漆喰が打ち込まれ、辺りの緑と素晴らしく調和がとれていた。
その穏やかな外観からは想像できないが、一歩中に入ると、深いブラウンの重厚な扉で統一された近代的な、―――そう、まるで要塞のような造りになっていた。
そして不思議とどこか隠れ家のような雰囲気が漂う。
美しい、とても美しい・・・それは、闇のラビリンスだった。
epi:6 月が見ている
パートミシェル P
「ン…シャル、ル…」
ミシェルは月明かりに晒された幼い顔立ちが、自分の与える苦痛に歪む様を存分に堪能していたが、その言葉がこぼれた瞬間、世界の全てが凍りついたように感じた。
弛緩していた思考がキリキリと絞め上げられ、心臓が拍動を止めたかのように圧迫された。
ミシェルは月明かりに晒された幼い顔立ちが、自分の与える苦痛に歪む様を存分に堪能していたが、その言葉がこぼれた瞬間、世界の全てが凍りついたように感じた。
弛緩していた思考がキリキリと絞め上げられ、心臓が拍動を止めたかのように圧迫された。
epi:5 欠落
パートマリナ コジカ
思考が閉ざされ感情がまとまらない。
何事にも変えがたい愛しさが込み上げるのに、同時に泣き叫んでしまいたくなる。
どこかに、何か大事な物を置き忘れて来てしまった様な不安感が、焦燥感が常に付きまとう。
何事にも変えがたい愛しさが込み上げるのに、同時に泣き叫んでしまいたくなる。
どこかに、何か大事な物を置き忘れて来てしまった様な不安感が、焦燥感が常に付きまとう。
身体が重いわ・・・とても。
関節という関節が外されてしまったよう。
下腹部に鈍い痛みが残る。
腕も上げられないわ。
このまま一歩も動けない。
身体が分解してしまうと思うほど、あちこちが痛い。
関節という関節が外されてしまったよう。
下腹部に鈍い痛みが残る。
腕も上げられないわ。
このまま一歩も動けない。
身体が分解してしまうと思うほど、あちこちが痛い。
2011/04/06
epi:3 Porte au ciel
パートミシェル コジカ
心地良い闇に身を委ねていたマリナの上に、ふいに濃い影が覆い被さった。
ついと上げられた神経質そうな白い指先が、安らかに寝息をたてる胸元を這う。そのまま柔らかな首を撫で上げ、やがて闇に小さく花開く、可憐な唇へとたどり着く。
ついと上げられた神経質そうな白い指先が、安らかに寝息をたてる胸元を這う。そのまま柔らかな首を撫で上げ、やがて闇に小さく花開く、可憐な唇へとたどり着く。
epi:2 闇より
パートミシェル P
冷えた月光ですら、この身に降り注ぐ光が鬱陶しい。
力任せにカーテンを引くと、心地よいいつもの僕のスペースが現れた。
床に散乱する意味も無いデータの羅列された紙切れが、手折られた花弁のように散らばっている。
僕は鼻歌交じりにそれを踏みつける。踏みにじる。
ぼんやりとした薄暗い光が、部屋の片隅から僕の空間へと垂流されている。
唯一馴染んだ愛しい光だ、君まで否定してしまったら僕になにが残るのだろうね。
力任せにカーテンを引くと、心地よいいつもの僕のスペースが現れた。
床に散乱する意味も無いデータの羅列された紙切れが、手折られた花弁のように散らばっている。
僕は鼻歌交じりにそれを踏みつける。踏みにじる。
ぼんやりとした薄暗い光が、部屋の片隅から僕の空間へと垂流されている。
唯一馴染んだ愛しい光だ、君まで否定してしまったら僕になにが残るのだろうね。
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