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2011/04/11

epi:20 屈服のくちづけ



パートマリナ&ミシェル P


わからない、全てが。
もう何がどうなっているのか、自分でもひどく混乱している。
自分の立場がわからない、自分の気持ちがわからない、ミシェルが何を考えているのかわからない―――。

epi:19 熱い背



パートミシェル P


なんだ、何が起こったんだ、一体。


鼓動がうるさいくらい、耳元で鳴っている。
息をするのも苦しいくらいに、胸がしめつけられている。
あいつにつかまれた背中が―――、どうしようもないくらいに、熱をもっている。

2011/04/10

epi:18 触れれば、もう



パートマリナ&ミシェル P


絵を描いている時は、何もかも忘れて熱中することが出来た。
というか、描かねばならないという焦燥感すら感じるのはなぜだろうと、マリナは常々思うほど、絵にのめりこむ自分を不思議に思っていた。
おそらく失った記憶さえはっきりすれば、その理由もわかるのだろうが、いつまでもない過去を悩むより、とにかく描くことの出来る今に感謝しようと決めていたので、鉛筆を握る手にも自然と熱がはいった。

epi:17 揺れる



パートミシェル P


「―――さて兄さん、あんたは何をやってるんだ? 
僕のいやがらせにはよく耐えているみたいだけど……あの豆狸のことは、もうどうでもいいのかい?」




ディスプレイから漏れる人工の光に照らしだされたその顔は、物憂げでエレガントな美しさを誇っていたが、細めた青灰の瞳の光は、したたかな悪意をにじませていた。
こうしている間にも、ミシェルは様々な方法で、シャルルに圧力をかけていた。
時には揺さぶりをかけるように、二人にしか解けないやり方で、マリナの映像や音声などを送ったりもした。


2011/04/09

epi:16 この声を



パートミシェル&マリナ P


ミシェルは隠れ家にしている洋館の三階窓から、中庭でちょこちょこと動き回るマリナを見下ろしていた。
気まぐれで食事をつくって以来数日間、ミシェルはマリナを避けていた。
自分でもなぜそうしているか理解できずにいたが、あの顔をみるだけで波立つ己の心に、心底嫌気がさしていた。
なぜだ、あれほど欲しかったもののはずなのに、向けられる表情ひとつにすら、神経が逆撫でされたように苛立つのは。
なぜなんだ。

epi:15 微光



パートマリナ&ミシェル P


心地よい揺れに身をまかせながら、マリナは幸福な浅い眠りを楽しんでいた。

胸が張り裂けるかと思うほどのあの想いは、なんだったのだろう・・・あの青みをおびた白、甘美な甘い香り、どこまでも高貴なその姿。
思い描くのは、街の花屋でわけてもらった、あの白バラ。
なぜだろう、こんなに嬉しいのは。
なぜだろう、こんなに心があたたかくなるのは・・・。
ぼんやりしたその姿を抱きしめたくて、もどかしさのあまりに伸ばした指先に、ふいに冷ややかな感触が襲った。
驚いて目を開けると、自分を抱き上げたミシェルの、氷のように美しい無表情な横顔が、目の前にあった。


epi:14 ずっと欲しい



パートミシェル コジカ


心底ムカツク野郎だよ、あんたは。
アレの記憶、心、身体、その意識の全てをあんたから取り上げて、全て貪り尽くし、そうしてアレのことごとくを奪ってやったのに。
果てはこれ以上ない絆を、アレの中に埋め込んでやったのに。
まだあんたはアレは自分のものだと言い張るんだ。
え? 兄さん、往生際が悪すぎだよ。
いい加減にしなよ。

2011/04/08

epi:13 蘇る白バラ



パートシャルル P


シャルルはほの暗い病室に一人たたずんでいた。
ミシェルの去ったドアの存在を背中に重く感じながら。

epi:12 テンペスト



パートシャルル&ミシェル P



「この患者が運び込まれた病室はどこだ!?」



絶えず人がいきかい、様々な指示の声のとぶ救急病院の廊下で、すれ違い様につかまえたドクターに、シャルルは詰め寄った。
白金の髪をふりみだし、突きつけた写真に映るのは、明るい笑顔の愛しい妻・・・マリナ。


「あ、あなたは?」


「彼女の夫だ! 容態はどうなんだ!? 命に別状は!?」




そうして告げられた事実に―――シャルルは戦慄した。

epi:11 この手の中に


2011/04/07

epi:10 光を探して



パートシャルル コジカ


この二ヵ月余りどう暮らしてきたのか分からない・・・。
魂の半分をもぎ取られたまま、狂ったように、失われたその半分を追跡する毎日だった。
それ以外もう周りがどうなろうと、知ったことではなかった。
飲まず食わず眠らず、ひたすらに情報を集める毎日。
ただ少しでもと、その痕跡を求めて奔走するのに、一向にその気配がない。
それは故意に妨害、或いはことごとくもみ消されてしまっているのだろう。

epi:9 ツクラレタ愛



パートマリナ コジカ


昨夜からあの人は珍しく出かけている。
昨夜は凄い嵐の夜だったのに・・・。
用事という用事は、ほとんど全てこの家の中で、おそらくは―――あたしは今でも不思議に思っているのだけれど―――画面上で済ませてしまっている人だから、なんだか家を空けているということが、ひどく妙に感じる。
自分から出かけることはホントに珍しい。
まるで世間にその美貌を晒すのを避けているかのようだ。
あんなに綺麗なのに何故なんだろうと、あたしはいつも思う。
何か理由があるような気がするが、それは聞いてはいけないことのように感じる―――。

epi:8 あやまんなさいよ



パートマリナ&ミシェル P


あれはいつのことだったか・・・マリナはミシェルと暮し始めた当初のことを思い返していた。

「・・・なに見てるのよ・・・」
「フン、次はどんなまずいものが出来るのかと思ってね。僕が餓死したらお前のせいだぞ」
「そう思うんだったら手伝うなり、出来たものでも買ってくるなりすりゃあいいでしょうが!」

「いやだね、マリナが作ったものじゃなきゃ食べない」
白金の髪をひるがえし、冷たい表情でぷいと横を向いた自称夫に、マリナは心底腹がたった。

epi:7 確信と不安



パートマリナ コジカ


それはとても美しいヴィラだった。

古い白い壁に木の漆喰が打ち込まれ、辺りの緑と素晴らしく調和がとれていた。
その穏やかな外観からは想像できないが、一歩中に入ると、深いブラウンの重厚な扉で統一された近代的な、―――そう、まるで要塞のような造りになっていた。
そして不思議とどこか隠れ家のような雰囲気が漂う。


美しい、とても美しい・・・それは、闇のラビリンスだった。

epi:6 月が見ている



パートミシェル P


「ン…シャル、ル…」

ミシェルは月明かりに晒された幼い顔立ちが、自分の与える苦痛に歪む様を存分に堪能していたが、その言葉がこぼれた瞬間、世界の全てが凍りついたように感じた。


弛緩していた思考がキリキリと絞め上げられ、心臓が拍動を止めたかのように圧迫された。

epi:5 欠落



パートマリナ コジカ


思考が閉ざされ感情がまとまらない。
何事にも変えがたい愛しさが込み上げるのに、同時に泣き叫んでしまいたくなる。
どこかに、何か大事な物を置き忘れて来てしまった様な不安感が、焦燥感が常に付きまとう。
身体が重いわ・・・とても。
関節という関節が外されてしまったよう。
下腹部に鈍い痛みが残る。
腕も上げられないわ。
このまま一歩も動けない。
身体が分解してしまうと思うほど、あちこちが痛い。

epi:4 消失


2011/04/06

epi:3 Porte au ciel



パートミシェル コジカ


心地良い闇に身を委ねていたマリナの上に、ふいに濃い影が覆い被さった。
ついと上げられた神経質そうな白い指先が、安らかに寝息をたてる胸元を這う。そのまま柔らかな首を撫で上げ、やがて闇に小さく花開く、可憐な唇へとたどり着く。


epi:2 闇より



パートミシェル P


冷えた月光ですら、この身に降り注ぐ光が鬱陶しい。
力任せにカーテンを引くと、心地よいいつもの僕のスペースが現れた。
床に散乱する意味も無いデータの羅列された紙切れが、手折られた花弁のように散らばっている。
僕は鼻歌交じりにそれを踏みつける。踏みにじる。
ぼんやりとした薄暗い光が、部屋の片隅から僕の空間へと垂流されている。
唯一馴染んだ愛しい光だ、君まで否定してしまったら僕になにが残るのだろうね。