2011/04/07

epi:10 光を探して



パートシャルル コジカ


この二ヵ月余りどう暮らしてきたのか分からない・・・。
魂の半分をもぎ取られたまま、狂ったように、失われたその半分を追跡する毎日だった。
それ以外もう周りがどうなろうと、知ったことではなかった。
飲まず食わず眠らず、ひたすらに情報を集める毎日。
ただ少しでもと、その痕跡を求めて奔走するのに、一向にその気配がない。
それは故意に妨害、或いはことごとくもみ消されてしまっているのだろう。


気を失った所に、無理矢理注射や点滴を打たれて、どうにか生きていた。
ある種の麻薬にも手を出しながら、正気を保った。
出来るならいっそこの身に流れる血の赴くままに―――狂ってしまいたかった。
だが私はまだ狂うわけには行かない。こんな所で死ぬわけにもいかない。

もしこの手にマリナが戻らないのであれば―――その時には、もう私はこの世には居ないであろう。

すぐにでも命を絶とう。

一刻でも、そんな世に耐えることは出来ない。


ルパートに義務を果たせと詰め寄られ、考え得る限り最小限にと思いながら、重い体を引きずり、それに臨む。
こんな時に、それでもこなさなければならなかったのは、苦痛以外のなにものでもなかったが、自分に架せられた役目だけは、捨てきることが出来なかった。
一体自分は何をしているのだろう。
時々、ひどく意識が混濁した。


ある日も、萎えてフラフラの手足を悟られないようにしながら、当主として社交の場に、その存在を示さなければならなかった時があった。
「ご機嫌麗しゅう、ムッシュウ? 今宵は、ムッシュウの小さな奥様はいらっしゃらないんですの?
いつも仲がおよろしくていらしたのに、どうなさったんです?」
「私の妻は・・・今少し体調を崩しまして療養に行っているのですよ、マダム。マダムはいつもお元気そうで何よりです」
「おかげさまで。でも奥様が羨ましいわ。
なにしろムッシュウは、世界でも名立たるお医者様でもいらしゃるんですもの。何の心配も要りませんわね。」
「それは・・・どうなのでしょうか、マダム?
医者の妻は何とかとも言いますしね。何かと返って負担をかけているものなのですよ・・・。」
「まあまあご謙遜を。ホホホホ」
私は自分がちゃんと普通の顔をしているのか、全く自信が無かった

鬼のような顔をしてはいまいかと

そんな空虚な気分で

半分心が分裂した抜け殻のまま

空しい役を演じ続け無ければならなかった

消耗しつくして帰った私のところに、微かながら引っかかる情報が入ってきた。
『・・・市の救急病院にて、マダム・マリナ・ドゥ・アルディに似た女性運ばれる』
と。
これは世界中にばら撒いた情報屋からの知らせだった。
思わずデスクを拳で叩いた。
側にあった、陶製のランプが床に落ちて砕け散る。
何故病院なんだ・・・? しかも救急だと!!? あの男はマリナにいったい何をした!!
もちろん―――無傷で戻ってくるとは思っていなかった。
見つけたとしてもそれなりの覚悟が必要だと。
それは分かりきったことだった。
それでも手がかりを見つけた・・・!! やっと。
やっと・・・やっと!!

無事でいてくれるだけでいい。

いや、生きていてくれるだけでいい。

君の全てが破壊されていようとも、この手に戻るものなら・・・私は何があったとしても必ず、それを全て受け入れると誓おう。


あの輝ける魂を、必ず・・・必ずこの手に取り戻す・・・!!












読んでくれてありがとう


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