注:21章から光編・闇編に分岐いたします。
この章をお読みになる前に、本編ポルトオシエル1~20章をお読み下さい。
この章をお読みになる前に、本編ポルトオシエル1~20章をお読み下さい。
パートミシェル コジカ
ずっと・・・ずっと、触れたかった。
今どんな顔で微笑んでいるのか、抱きしめたらどんな匂いがするのか。
あの髪をなでたなら、どんな感触なのか。
僕は気づかず、いつでもその熱い温もりを求めていた。
―――この手で、感じてみたいと。
ここに隠して全てを奪っていても、その輝きを失わずに、僕にくってかかってきたお前。
それまで僕は、存在自体すら認められず、決して光に当たることも許されなかった。
何もかも奪われた―――もう一人の自分に。
突然に幽閉された幼児期。
全く変化のない、虚空のような空間でただ一人、交わされる言葉もなく、声を発することすら忘れてしまうような環境の中・・・外界を照らす光に、ひたすら憧れていた。
その願いは叶えられることはなかったけれど。
初めてぶつかり合う人間性。
誰も恐れて近づくものなど無い自分に、交わされる会話。
僕を『僕』として呼ばれる名前・・・お前に名を呼ばれるたびに、初めて確かな実在としての自分が、新たに生まれた気がした。
誰も恐れて近づくものなど無い自分に、交わされる会話。
僕を『僕』として呼ばれる名前・・・お前に名を呼ばれるたびに、初めて確かな実在としての自分が、新たに生まれた気がした。
素直に嬉しい・・・微笑を今ここで向けられることが。
いとおしさで震えるこの胸の鼓動が。
初めて味わうその甘さに、眩暈がする。
この瞬間のためなら、なんだってしてしまうだろう、何度だってね。
いとおしさで震えるこの胸の鼓動が。
初めて味わうその甘さに、眩暈がする。
この瞬間のためなら、なんだってしてしまうだろう、何度だってね。
現になんだって出来るさ・・・お前を永久に手に入れられるなら。
いつもいつも、僕を陥れた闇のかわりに全てのものを、光を手にしていた分身が、終には愛まで手に入れていく様を、もう見ていることが出来なかった。
壊してしまおう
もう二度と修復が不可能なほどに
奪ってやろう
一番残酷な方法で
吹き荒れる憎悪と復讐に身を焼き、傍らに優しく照らす光を、全て僕の闇で覆った。
もう僕にしか照らすことが出来ず、見ることすら感じることすら、出来ないように。決して安らぐこと無く、他を許すことの無い魂。
触れたら即座に切れてしまいそうな憎悪、何も必要としない凍った身体。
もう僕にしか照らすことが出来ず、見ることすら感じることすら、出来ないように。決して安らぐこと無く、他を許すことの無い魂。
触れたら即座に切れてしまいそうな憎悪、何も必要としない凍った身体。
しかし、気が付いたらいつのまにか堕ちていた。
この手で偽ってきた光が、なくてはならない存在となっていく。
知ってしまったその温かさを、手放せなくなったのは他でもない、自分だ。
何より大切だった、何より愛してしまった、誰よりも、何よりも・・・。
僕が最初で最後に、唯一降伏したのがよりによってお前だとは、なんと皮肉だろうね。
想像すら出来なかったよ。
この手で偽ってきた光が、なくてはならない存在となっていく。
知ってしまったその温かさを、手放せなくなったのは他でもない、自分だ。
何より大切だった、何より愛してしまった、誰よりも、何よりも・・・。
僕が最初で最後に、唯一降伏したのがよりによってお前だとは、なんと皮肉だろうね。
想像すら出来なかったよ。
僕が唯一、この世でただ一人愛する人間。
そして片割れが唯一、この世でただ一人愛した女・・・とは。
滑稽にすら思えてくるこの愛憎劇を、誰が止めてくれるんだい、ねぇ、マリナちゃん?
僕達の様な凶暴で狂気の双子はね、もう君の生命でしか、冷ますことが出来ないのかもしれないよ?
あんたもつくづくとんでもないものに囚われたよね。
君はどこまでも壊され続けるよ。
その輝かしい光を持ち続けている限り、ね・・・?
僕達の様な凶暴で狂気の双子はね、もう君の生命でしか、冷ますことが出来ないのかもしれないよ?
あんたもつくづくとんでもないものに囚われたよね。
君はどこまでも壊され続けるよ。
その輝かしい光を持ち続けている限り、ね・・・?
共に過ごした時間は鮮やかに蘇り、想いが溢れてくる。
確かに僕の中にも愛を認めたよ、君にだけ。
確かに僕の中にも愛を認めたよ、君にだけ。
でも。
君が注いでくれた愛情は、全てが僕を通り越して、通過していってしまうような猜疑心がつきまとうんだ。
一方通行な思いでしかなく、偽りでしかない愛。
だけど、僕を『僕』として見て欲しくなる、―――『僕』しか見ないお前が欲しくなる。
記憶を失くされても何度でも蘇る愛が欲しい。
どうしたらいいんだ。
自分を引き裂き混沌とする想い、真実でそれを手にした片割れに対する、飲み込まれそうなほどの羨望と嫉妬。
ボタンを掛け違ったまま、ねじれた虚実を含んだまま、それでも確実に現実となって進む事実。
待っているものは破壊という名の死の闇か、希望という名の新しい誕生か。
それぞれを少しずつ変化させ、壊れた魂が向う先に何があったとしても、この想いだけは手放さないよ、永遠にね。
一方通行な思いでしかなく、偽りでしかない愛。
だけど、僕を『僕』として見て欲しくなる、―――『僕』しか見ないお前が欲しくなる。
記憶を失くされても何度でも蘇る愛が欲しい。
どうしたらいいんだ。
自分を引き裂き混沌とする想い、真実でそれを手にした片割れに対する、飲み込まれそうなほどの羨望と嫉妬。
ボタンを掛け違ったまま、ねじれた虚実を含んだまま、それでも確実に現実となって進む事実。
待っているものは破壊という名の死の闇か、希望という名の新しい誕生か。
それぞれを少しずつ変化させ、壊れた魂が向う先に何があったとしても、この想いだけは手放さないよ、永遠にね。
君と過ごした思い出が、すべてここにある。
壁に掛けたデッサンに、陽の当たる中庭に、温もりの残るこの部屋に。
壁に掛けたデッサンに、陽の当たる中庭に、温もりの残るこの部屋に。
あの僕と同じ口から「愛」とか言われた時には、どうしようかと思ったけれど・・・君には、愛とそうでないものの区別はついているの?
運命が自分を二つに分けた。
そこに何の意味があるのか、僕は始めから無意味な存在だった。
初めて疑問を持った。
こぼれていくだけのこの生に、君ならどんな意味を与えてくれるの?
そこには何の違いがあったのか、僕はそれが知りたい。
そこに何の意味があるのか、僕は始めから無意味な存在だった。
初めて疑問を持った。
こぼれていくだけのこの生に、君ならどんな意味を与えてくれるの?
そこには何の違いがあったのか、僕はそれが知りたい。
唯一つ最後に残されたものは、運命への挑戦。
壊れていくのが、狂っていくのが宿命なら、この存在が普遍でも永遠でも無いなら、そんな運命は捨てる。
自分の力で、そうできると君は言った。
どんなことをしても、どこかで分かっていた孤独を、繋ぎ止めてくれる何かが欲しい。
もっと早くに壊してしまえばよかったね、粉々に跡形すらなく。
壊れていくのが、狂っていくのが宿命なら、この存在が普遍でも永遠でも無いなら、そんな運命は捨てる。
自分の力で、そうできると君は言った。
どんなことをしても、どこかで分かっていた孤独を、繋ぎ止めてくれる何かが欲しい。
もっと早くに壊してしまえばよかったね、粉々に跡形すらなく。
―――自分が縛られる感情に触れてしまう前にね。
気が狂っても永遠に束縛される。
知ってしまったら、知らなかった自分には戻れない。
そう狂気すら忘れることを許さない、強烈な光だ。
僕の闇が逆に一層濃く感じるね。
知ってしまったら、知らなかった自分には戻れない。
そう狂気すら忘れることを許さない、強烈な光だ。
僕の闇が逆に一層濃く感じるね。
闇は闇のまま・・・光は光のままに、触れることなく混ざることなく。
僕には決っして与えられなかったもの、それを羨ましいと思ったことさえ、一度としてない。
そこにあった何かを知ったとしても、およそ感情という感情が欠落した自分に、触れられるわけはない。
何が嬉しいのか、何が悲しいのか、そんなものは全て無意味なことだ。
ずたずたの心に全て素通りしていく。
感情を持てば生きてはいかれない、別段そのことに興味もなかったけれど。
そこにあった何かを知ったとしても、およそ感情という感情が欠落した自分に、触れられるわけはない。
何が嬉しいのか、何が悲しいのか、そんなものは全て無意味なことだ。
ずたずたの心に全て素通りしていく。
感情を持てば生きてはいかれない、別段そのことに興味もなかったけれど。
永遠続く退屈と虚無の中に身を置き、サラサラと崩れ落ちる時間を過ごす。
果てしなく自分に酷似した不思議な虚像。
頬杖を突き、少し期待を込めて眺めてみる。
果てしなく自分に酷似した不思議な虚像。
頬杖を突き、少し期待を込めて眺めてみる。
―――ねぇ、この退屈な気分をどうにかしてよ―――
面白い蝶を、捕まえたようだね。
僕と同じ憂鬱と無関心しかないと思っていたのに、意外だね。
どこにでも転がっていそうなそんなものに、どこにも無い、かえられない唯一があるの?
面白い芸でもできるとか?
僕と同じ憂鬱と無関心しかないと思っていたのに、意外だね。
どこにでも転がっていそうなそんなものに、どこにも無い、かえられない唯一があるの?
面白い芸でもできるとか?
僕には視えるよ。
あんたが後生大事に見えない檻に閉じ込めて、誰にも、見せまいとしているのがね。
あんたが後生大事に見えない檻に閉じ込めて、誰にも、見せまいとしているのがね。
そうか、公爵様は今度は蝶の収集に勤しんでるのかなぁ。
あんたらの気違いじみた収集癖には、ずいぶんとあきれたけど、今度は当主はまた格別に悪趣味だねぇ。
あの唯美主義はどこいったんだい。
あの馬鹿でかい公爵家の深窓に籠めっきりじゃあ、空気が悪すぎていけないよ。
そんな所じゃあすぐに死んじゃうよ?
いけないなぁ、すぐに逃げないようにピンで留めなきゃ。
あんたらの気違いじみた収集癖には、ずいぶんとあきれたけど、今度は当主はまた格別に悪趣味だねぇ。
あの唯美主義はどこいったんだい。
あの馬鹿でかい公爵家の深窓に籠めっきりじゃあ、空気が悪すぎていけないよ。
そんな所じゃあすぐに死んじゃうよ?
いけないなぁ、すぐに逃げないようにピンで留めなきゃ。
あんたがあまりにもまぬけすぎるから、僕がかわりにやってやったんだ。
僕が
出してやるから
僕にも
見せて―――?
読んでくれてありがとう
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