2011/04/12

epi:24光編 広がる心



パートミシェル リンダ


―――罪悪感



ミレーヌがとても恐ろしいものだと言っていた。
なぜ今、この言葉を思い浮かべるのか・・・
あの女―――ママンを壊した悪魔『罪悪感』
俺が罪悪感を持っていると?
誰に?
マリナにか?
それとも、もっと別の誰か・・・・・
―――まさか思い出したくもない、俺にソックリな片割れにか?
ハッ、そんな筈はない。絶対に・・・絶対にだ!
アイツやアルディが俺に罪悪感を持っても、何で俺がアイツに・・・
持つわけがない。
そんな事がある筈がないんだ・・・・・
俺がそこら辺に居る奴等と同じだというのか?
俺にそんな生易しい心が残っていると・・・
心なんてあるもんか、そんな物とっくに何処かに捨てて来たさ、俺が俺である為に。
俺に心はナイ。
そんなモノ持っていたら、今ココで生きてる訳がないんだ。
とっくの昔に俺と云う存在なんて、この世から消えていたはずだ。
今、俺が此処にいる。

―――その事が俺に心がない証拠

―――その事だけが俺の唯一の誇り

心がない? ホントウか?
じゃあマリナに対する想いはどうなんだ?
胸の奥がギュウっと締め付けられる、コレは何なんだ・・・
アイツが笑うと胸に込み上げてくるコレは?
マリナを離したくないと切に願うこの想いは―――
気が付けば何時も目で追ってるのは・・・
声が聞こえただけで構えてしまうのは・・・
抱きしめたくなるのは・・・
自分を見失いそうになるのは―――ナンデナンダ

俺は自分を必死に抑えてるのか?
心がなければ説明できないこの想いが俺を苦しめる。
苦しくて・・・クルシクテ・・・セツナイ
認めない―――絶対にっ
認めたくは・・・ナイ、が
俺は認めなければならないのか・・・
もう限界なのか
もう知らないふりはできない
俺にも心がある事を―――

でもきっと、俺に心は無かったんだ。
本当に無かったんだ。
本当に・・・

―――――マリナ。君に逢うまでは
こんな気持ち初めてだ。どうすれば君は笑ってくれる?
どうすれば俺だけを見つめてくれる?
君は帰りたい? ―――あの男の元へ。
君は今、何を望む?
本当の事を知ったらマリナ、君は俺を嫌う?
でもね、それでも俺は君を求めてやまないんだ。
こんな事ばかり考えてしまうんだ。
俺がこんなふうになるなんて・・・
いいや違う、チガウ・チガウ・チガウ
こんなコトある訳がない
なにかの間違いだっ
―――俺がアイツを・・・マリナを

でも・・・俺だって世に云う天才だ。
自分の気持ちくらい分かってる。プライドもある。
―――分かってたんだ、ずっと前から気付いてた・・・
もういい加減認めなくちゃね。
これ以上の誤魔化しは、かえって醜い。


そう―――
きっと・・・きっと俺は君の事が好きなんだ。
マリナの事が好きでたまらないんだ。



一生を賭けてでも遂げると誓った、シャルルという俺にソックリな男の事も、アルディへの復讐も、もうどうでもいいほどに。
マリナへの気持ちを認めたこの瞬間、俺の胸に『罪悪感』その言葉が住み付いた。
きっとこれで良かったんだ、これで初めてマリナと同じ場所に立てた気がする。
ここからきっと始まるんだ。
俺はママンと同じにはならない。
『罪悪感』そんなモノに心はやらない。
俺が心を許すのは―――マリナただ一人

・・・こんなに簡単な事だったんだな、認めたら、さっきまでのもやが消えた。
スゥーっと何かが溶けていく。
入れ替わるように新しい空気が送り込まれる。
マリナを好きだと云う気持ちが、静かになった心に落ち、水面に広がっていく。
ゆっくりと、ゆっくりと確実に俺の心に沁みこんで行く―――     

マリナが好きだと・・・
マリナが欲しいと・・・

その輪をさらに広げながら―――俺の心に、繰り返し繰り返し―――












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